2021年1月25日、コーエーテクモホールディングスの第3四半期決算において、ある数字が注目されました。300億円近い経常利益のうち、実に20%ほどを株式の運用益が占めていたのです。その運用をしている襟川恵子(えりかわ けいこ)会長についてご紹介します。
コーエーテクモホールディングス会長の襟川恵子氏の投資が話題に
襟川恵子会長が個人で行なっている投資の利益がコーエーテクモホールディングスの利益の20%ほどを占めているというのは驚きです。なぜここまで注目されているのかを説明します。
コーエーテクモホールディングスとは
襟川恵子会長の話をする前に、「コーエーテクモホールディングス」について知っておくとよいかと思います。
ゲームが好きな人ならご存知かと思いますが、同社は株式会社コーエー(前 株式会社光栄)とテクモ株式会社が経営統合した会社です。テクモはスクエア・エニックスから友好的買収の提案を受けていましたが、創業者同士の付き合いがあったコーエーを合併相手に選んだという経緯があります。
コーエーと言えばゲーム「信長の野望」が、テクモと言えば「キャプテン翼シリーズ」や「デッド オア アライブ シリーズ」が有名です。
襟川恵子会長の投資が話題の理由
ここで襟川恵子会長の投資に話を戻します。なぜコーエーテクモホールディングスの会長の投資が話題になるかというと、ふたつの理由があります。
まずひとつは、会社の経営者自身が株式などでの投資運用をするケースが稀であること、そしてもうひとつは襟川恵子会長の投資実績が目を見張るものであることです。
たとえばソフトバンクも投資で稼いでいますが、あくまでもソフトバンク・ビジョン・ファンドを通して行なっています。意思決定は孫正義氏が行っていても、会社組織で運用しています。
一方で襟川恵子会長は個人で、時価1200億円もの会社資金を運用しています。
襟川恵子会長の経歴
ここで気になるのが、なぜ襟川恵子会長がそこまで投資に精通しているのかということです。
実は襟川恵子会長が投資を始めたのは18歳の頃だそうです。祖父母が株式投資をしている姿を見て育ったため、ごく自然に(?)証券会社へ足を運んだとのこと。当時から利益を出していたようです。
やがて襟川陽一氏(コーエーテクモホールディングス社長)と結婚し、家業である事業を手伝うなかで貯めたお金を役立てていました。そして当時普及し始めたマイコン(現在のパソコン)の存在を知り、襟川恵子氏が襟川陽一氏にプレゼントしたそうです。
襟川陽一氏はプログラミングを覚え、"シブサワコウ"の名前で「信長の野望」などを開発、株式会社光栄が販売しました。そして襟川恵子氏が株式会社光栄を運営、「決して値引きをしない」強気の経営で光栄ブランドを確立し、事業を拡大させることになります。
この経営手腕が投資にも色濃く反映されているようです。
襟川恵子会長の運用手法とは?
次に気になるのは、襟川恵子会長がどのように投資をしているのかということです。運用は主にふたつ行っています。
まずひとつは個別株の運用、そしてもうひとつは債権です。
債権は利回りが低い安定志向の金融商品として有名ですが、襟川恵子会長は"仕組み債"というものを運用しています。
仕組み債とは、デリバティブ(金融派生商品)が組み込まれた債権です。これはマーケットの動向により満期や利子が変動する仕組みとなっています。
通常の債権と違い元本は保証されず、そのかわりに高い利回りが期待できるのが特徴です。つまり、ハイリスク・ハイリターン型の債権を運用していると言えます。
そしてもうひとつの株式ですが、こちらはファンドなどではなく、直接自分で個別株を売買しているそうです。選ぶ銘柄は"グロース株"、つまり成長株になります。これから業績が向上すると見込んだ銘柄を仕入れて、高値になったところで売却するという手法です。
グロース株が難しいのは、いかにして成長が期待できる銘柄を探すかということです。というのも、会社の成長力というものはなかなか数字には表れないからです。
一般的にグロース株のスクリーニング(ふるい分け)には、ROE(自己資本比率)や時価総額、直近の売り上げ伸び率などを指標にします。しかしこれらの数値に絶対的なものはありません。
襟川恵子会長の銘柄の選び方
では襟川恵子会長はどのように銘柄を選んでいるのでしょうか。その答えは単純に、「自分が入社したいと思える会社、経営したいと思える会社」だそうです。
シンプルですが、襟川恵子会長らしい選び方です。まさに株式会社光栄を大きく成長させた経営手腕を生かした選び方だと言えるでしょう。
まとめ
銘柄選びにおいて具体的に財務をどのようにチェックしているのかは、ご本人しかわからないと思います。しかし投資において積み上げた実績は、コーエーテクモホールディングスを順調に成長させてきた経営手腕を背景に裏付けされたものと言ってよいのではないでしょうか。