投資信託の格付け評価などを行うモーニングスターが、2021年5月の国内公募追加型株式投信(ETF除く)の純資金流出入額は7082億円の純資金流入となったことを発表しました。このうち実に6656億円は「国際株式型」に流入しています。
このニュースが何を意味するのか、詳しく解説します。
外国株式が買われている
まずわかることは、国内の投信で外国株式を多く買い入れているということです。「純資金流出入額」とは、売却額と購入額との差額のことで、「純資金流入」は売却額よりも購入額のほうが多いことを意味します。
5月における投信の純資金流出入額は次のようになっています。
- 国際株式型 6,656億円
- 国内株式型 -248億円
- 国内債券型 631億円
- 国際債券型 -286億円
- バランス型 346億円
- 国内REIT型 -125億円
- 国際REIT型 -159億円
こうしてみると、国内株式を売却して外国株式の比率を大幅に増やしていることがわかります。
日本株式からの資金流出が顕著に
投信の日本株式の純資金流出が気になるところですが、2月からの純資金流出入額と日経平均株価のそれぞれの高値・安値をみてみましょう。カッコ内が日経平均の高値と安値(単位は円)です。
2月 -1,984億円(30,714/27,649)
3月 543億円(30,485/28,308)
4月 -257億円(30,208/28,419)
5月 -248億円(29,685/27,385)
こうしてみるとわかりますが、3月は大幅に純資金流入しており日経平均株価も安値は切り上げています。ただし高値は更新することなく、勢いはありません。
そして4月、5月と投信からの純資金流出に呼応するかのように、日経平均株価は高値も安値も下げています。
外国株式へは継続して資金流入
では国内株式が売却される代わりに国外株式が購入されているのでしょうか。今度は国際株式型の純資金流出入額を2月から5月まで見てみましょう。比較のためカッコ内にはNYダウ平均の高値と安値(単位はドル)も記載します。
2月 7,925億円(32,009.64/30,014.97)
3月 7,411億円(33,259.00/30,766.81)
4月 7,183億円(34,256.75/32,222.38)
5月 6,656億円(35,091.56/33,473.80)
実は国際株式型の純資金流入額は減少していることがわかります。それに対してダウ平均株価は上昇を続けています。これは利益確定をしつつ、新規での買い入れを続けているとも解釈できます。ただし高値警戒感から、買い入れ額は縮小しているとも推測できます。
こうして見るとやはり、投信では国内株式は売却して利益確定をしたうえで、海外株式を購入している図式になっていると考えられるでしょう。
海外株式に投信の資金が流入する理由
日経平均株価は年初から上昇を続け、一時は大きく下落したものの5月末時点での年初来上昇率は5.16%となっています。これを世界の株価指数の年初来上昇率ランキングで見ると、次のようになっています。
1位 オーストリア 23.42%
2位 サウジアラビア 21.42%
3位 ベトナム 20.31%
4位 スウェーデン 19.58%
5位 ポーランド 16.24%
6位 フランス 16.14%
7位 台湾 15.86%
8位 アルゼンチン 15.70%
9位 メキシコ 15.47%
10位 ロシア 15.14%
11位 アメリカ(ラッセル2000種指数)14.89%
21位 アメリカ(ダウ工業平均)12.82%
23位 ドイツ 12.41%
33位 韓国 9.92%
36位 イギリス 8.70%
38位 香港 7.05%
37位 日本(TOPIX)6.56%
41位 アメリカ(ナスダック)8.19%
45位 日本(日経平均)5.16%
実は先進国の中では、日経平均株価指数の上昇率は最下位となっています。そのため、投信では海外株式の比率を増やし、パフォーマンスを高めているのです。
まとめ
投資マネーはより高い利益を生み出す投資先に向かいます。投信の資金の流れを見ると明らかに、国内株式から海外株式に資金が流れていることがわかります。ただし純資金流入額が減少していることから、海外株式への高値警戒感を持っていることも伺えます。
資産運用をする際には、このようにお金の流れを見ることにより、どこに投資すべきなのかがわかるようになるでしょう。